いきなり、不都合な事実から始めます。あなたの会社は、トラックドライバーを1回あたり平均3時間、待たせ、作業させています。そして十中八九、その自覚はありません。
2024年問題——ドライバーの時間外労働の上限規制と、新しい物流効率化法。多くの荷主企業が、これを「運送業界が大変になる話」「義務をどう乗り切るか」として捉えています。ドライバーが足りないのは運送会社の事情であって、自社は荷物を出す側にすぎない、と。
その認識こそが、最初の、そして最大の間違いです。
01 — 不都合な事実「ドライバー不足」を、作っているのは誰か
国土交通省の調査によれば、トラック1運行あたりの荷待ち時間は、平均で約1時間34分。荷待ちと荷役を合わせると、1運行あたり約3時間にのぼります。ドライバーは、走っている時間と同じくらいの長さを、荷主の都合で「待たされ」「積み下ろしさせられて」いる。この3時間がなければ、同じ人数で、もっと多くの荷物が運べたはずです。
つまり、世間が「ドライバー不足」と呼んでいるものの相当部分は、トラックや運転手の頭数の問題である前に、荷主側が生み出している「時間のムダ」です。足りないのは人ではなく、奪われているのは時間。そして、もっと直視しづらい事実があります。
(発荷主24% / 着荷主20%)
荷待ちの発生を「ある」と認識している割合は、運送会社では7割を超えます。ところが、待たせている当の荷主——荷物を出す側・受け取る側——では、ともに約2割。待たせている側の8割が、自分が待たせている事実に気づいていないのです。これは「知っていて改善しない」より、はるかに根が深い。問題として認識すらされていないものは、永遠に直りません。
「ドライバーが足りない」と嘆く会社が、実は自らその不足を作り出している。
だから、2024年問題は「運送会社に任せる問題」ではありません。荷主が、自社の足元を見直す問題です。そしてこの逼迫は、一過性ではない。国土交通省の検討会の試算では、何も手を打たなければ、2030年度には輸送能力の約34%が不足する——運ぶべき荷物の、3つに1つが運べなくなる可能性が示されています。「頼んでも運んでもらえない」時代が、すぐそこにあります。待たせ続けてきた荷主から順に、運んでもらえなくなる側に回るのです。
02 — つまずく場所「人が足りないなら、機械で」という早とちり
不足を自覚した企業が、次に向かう先は、たいてい決まっています。「人が足りないなら、機械やシステムで人を減らそう」。倉庫の自動化、配送管理システム、在庫管理ツールへと、まっすぐ向かうのです。発想としては自然です。けれど、ここに最初の落とし穴があります。これらの投資は、入れれば効く、というものではありません。
工程が整理されないまま自動化すれば、ムダな動きをそのまま高速化するだけ。しかも自動化は大型の設備をともなうため、いちど据え付けると簡単にはレイアウトを変えられず、事業や物量の変化に合わせた最適化を、かえって妨げてしまうことさえあります。
システムも同じです。ルールが定まらないまま導入すれば、現場は二重入力に追われ、やがて使われなくなる。発注側に知識と経験がなければ、ベンダーの提案を評価できず、言われるまま身の丈に合わないものを抱え込む——そうして「これは何のためだったのか」となるのです。
そして決定的なのは、ここです。先に見た現場のムダ——3時間の荷待ち・荷役——の多くは、自社の段取りや商習慣から生まれています。その整理をしないまま機械だけを入れても、ムダは現場に残ったまま。高い設備が、宝の持ち腐れになります。
物流の高度化には、順番があります。順番を誤れば、投資はコストにしかなりません。逆に、順番さえ守れば、規制対応という「守り」は、コスト構造そのものを変える「攻め」へと、必ず接続できます。
その順番は、突き詰めれば三つの層です。まず、計画——物流を中長期計画と事業計画に位置づけ、どれだけの物量を、どのコストで運ぶのかを決める。次に、土台——現状をデータで可視化し、5Sや工程管理で仕組み化する。そして最後に、高度化——整った土台の上で、省人化・共同化・SCMへと投資する。多くの企業が失敗するのは、この一段目と二段目を飛ばして、いきなり三段目の設備やシステムに飛びつくからです。順番が逆なのです。
ドライバー不足を作ってきたのが荷主なら、それを解けるのも荷主です。自社が生んでいる3時間のムダを直視し、計画から土台、そして高度化へと、順番どおりに手を打つ。それができた会社にとって、2024年問題は脅威ではなく、コスト構造を作り変える数年に一度の好機になります。待たせ続けて運んでもらえなくなる側に回るか、それとも、ここで足元を変えるか。分かれ目は、賢い設備でも潤沢な予算でもなく、手をつける順番にあります。